デッドリフトで「背中はまだ余裕なのに握力が先に限界」。そんな経験はありませんか。ですがその原因は、握力そのものの弱さとは限りません。握り方の引き出しと、チョークを使える環境。この2つで、握力の「見かけ」は大きく変わります。
「背中より先に握力が限界」問題
デッドリフトを続けていると、多くの人がこの壁にぶつかります。狙っている背中や脚はまだ余力があるのに、指がほどけて先にバーが落ちる。当ジムは取扱バーベル最大340kgまで積める環境ですが、重量が上がるほどこの「握力の壁」は誰にでも訪れます。よくあることですが、握力が弱いというより、握り方と「滑る環境」の問題であることが多いです。
現場で「握力が弱くて」と言う人の多くは、実はチョークを使えず、握り方の選択肢を知らないだけ、というのが正直なところです。握力は「才能」ではなく、握り方とチョークで底上げできる。順番に見ていきましょう。
まず、握り方の引き出しを増やす
ストラップに手を伸ばす前に、握り方の選択肢を知っておきましょう。場面によって使い分けるのが基本です。
- 01
ダブルオーバー(順手)
両手とも順手。基本の握りで、握力の練習にもなります。まずはここから始めます。
- 02
オルタネイト(片手返し)
片手を逆手にすると、バーの回転が止まって保持力が上がります。高重量で握りが負けそうな時の定番です。
- 03
フックグリップ
親指をバーに巻き、その上から指で押さえる握り。ウエイトリフティングでよく使い、国体(69kg級)に出場した当ジムのコーチも競技で使う握りです。最初は痛みますが、慣れると強力です。

その「滑り」、握力ではなくチョークの問題かもしれない
見落とされがちですが、多くの一般ジムはチョーク禁止・ストラップ不可です。汗で滑るバーを素手で握れば、背中より先に指が負けるのは当たり前。握力を疑う前に、まず滑りを止める。当ジムはチョークを常備し、ストラップ・ベルトの持込も自由にしています。道具を「使える環境」かどうかで、握力の見かけは変わる。
ストラップはいつ使うべきか
ストラップは「握力を鍛える機会を奪う道具」ではありません。目的の筋肉を追い込むために、握力を補助する道具です。使いどころを決めておくと、頼りすぎも避けられます。
| 場面 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| メインセット(高重量) | オルタネイト or フック | まず自分の握力で挑む |
| 高レップの補助種目 | ストラップ可 | 握力より背中の追い込みを優先 |
| 握力トレの日 | 素手(順手) | あえて握りに負荷を残す |
握力そのものも鍛える
道具に頼るだけでなく、握力自体も伸ばせます。デッドリフトのトップで数秒キープする、バーにぶら下がって保持するなど、握りを最後まで意識する習慣が効きます。滑りをチョークで止めたうえで、素手で挑む場面を残しておくのがコツです。
「握力が弱くて」と言う人に、まずチョークを渡す。それで持てたら、弱かったのは握力じゃない。環境だ。
ストラップに頼ると握力が弱くなりますか?
すべてをストラップに任せれば、握力を鍛える機会は減ります。ですがメインセットは素手、補助種目はストラップ、と使い分ければ両立できます。道具は逃げではなく、使い分けの問題です。
まとめ
握力の限界でトレーニングを打ち切らないために、握り方の引き出しを増やし、チョークで滑りを止め、ストラップは使いどころを決める。素手で挑む場面を残せば、握力も一緒に育ちます。フォームと合わせて体験で確認してください。
Author

若松 鉄平
ヘッドコーチ/ウエイトリフティング・S&C歴12年
ウエイトリフティングで国民体育大会に出場(69kg級)。自身の競技経験をもとに、初心者のフォーム習得から選手の試合ピーキングまで一貫指導。「バーは正直だ」が口ぐせ。
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